たまにふらふらとICOカウントダウンを眺めるのですが、目を引く通貨を見つけました。
IMMLAというロジスティクス(物流系)のコインのようです。
過去に物流系企業に対し仕事していたことがあり、気になるのでホワイトペーパーを読むことにしました。
ホワイトペーパー:http://immla.io/IMMLA_WP.pdf
IMMLAとは
ロジスティクス業界はIT化が進んでいるものの、情報の不均衡はいまだにあり、物流量の低下/高価格を招いている。こうした無駄を排すことで、5倍の効率化が目指せる
とのこと。また、
IMMLAは物流サービスを受ける側、提供する側双方にサービスを提供する。そのプラットフォーム上でIMMLAトークンを利用し、サービス料を得る
という建て付けのようです(引用っぽく書いていますが、ちょっと私の方でまとめています)
個人的な感想ですが、物流ってインフラを支える意義深い業界で、各国各地域に運送網を張り巡らしており、契約手法も多様です。
細かい道を知っているのは現地の人、ということで、現地化を進めているグローバル企業が多く、小さなローカル企業(地元の運送屋さん)もたくさんあります。
なので、なかなかそれをひとつのプラットフォームにするのは難しいのではないか、と直感的には思ってしまいます。
もちろんできたら物流情報を掌握でき、どこになにがどの程度あるのか、いつどこにどのくらいの時間で運ばれるのかがすべてわかり、業界を牛耳れるかもしれませんが。。
Pre-ICO(現在実施中)では約50万ドル(約5,500万円)、ICOでは約1,210万ドル(約12.5億円)のサイズを想定しているようです。 キャップがあるのはいいことですね。
Pre-ICOのほうがICOにくらべ安く買えます(30%引きくらい)。
本プロジェクトの母体
3つの企業が本プロジェクトの母体となったようです。
Soft Business Solutions
ちゃんとしたホームページがなく、facebookだけです。
https://www.facebook.com/SoftBusinessSolutions/
業務プロセス改善(仕事の簡素化)のシステム提供、ということで、給与計算システムなどを提供しているようですが、規模感などは不明です・・・
Hellmann Worldwide Logistics
http://www.hellmann.net/en/japan/
ドイツ発祥の物流屋さんで、140年くらいの歴史のある老舗企業です。
売上は3000億円くらいなので、たとえば日本郵船(売上1.9兆円)と比べると結構小規模の会社です。
日本にもオフィスがあるらしく、従業員は7人だけのようです。
Mepa Capital
ロシアの金融会社のようです。
ホワイトペーパーでは5つのIPO(株式上場)を成功に導いた、とのことです。 が、調べてもあまり出てこない・・・
うーむ、まぁ新しいサービスなので、そこまで大手は入らないとは思いますが。。
IMMLAが物流業界に感じる課題
一口に物流と言っても、ドライバー一人で足りるよね、みたいな単純な話でなかったりします。
たとえば日本からアメリカに貨物を送る場合、、
- 日本の倉庫から港に運ぶ
- 港に一時(たとえば予約した船便が来るまで)保管する
- 船に運び入れる
- 船で運ぶ
- アメリカの港で一時保管する
- 港から陸路で貨物を目的地まで運ぶ
このような一連の流れをサプライチェーン(供給の流れ、といったところでしょうか)といい、複数の人/会社が立ち会っています。
この前提で、IMMLAが感じている現状の物流業界の課題は、というと・・
- 貨物の保有者の信用力:貨物を受け取ったタイミングで、貨物保有者が輸送費を支払うため、運送会社は貨物保有者の信用力をチェックし、それに応じたプレミアムを徴収する(輸送費+αを設定する)これによって輸送費は30%程度変わりうる
- 貨物の損傷:貨物を運ぶときに、貨物が傷つくリスクがあるが、傷つけた当人がそれを隠して、次の運送会社に渡す可能性がある。貨物保有者までわたった段階で、損傷に気づいても、補償を要求するのは難しい(誰がやったかわからないから)
⇒貨物にはCIFなどで保険をかけることが多いでしょうから、原理的には荷受人などは補償を受けるのでは。保険会社が損傷の原因を調査するときにはこういったところが課題になりえるでしょうか・・
- 脱税リスク:サプライチェーン上の誰かが脱税している、と税務署が疑うと、その貨物は没収されたり輸送できない状態になる
- 為替変動リスク:運送会社は自社が使う通貨とは別の通貨を価格として設定していることがある(ドル決算だが日本の企業に対しては日本円で請求している、など)ため、為替変動のリスクを避けるため、価格を高めに設定している
- 保険の範囲:大半の運送会社(特に輸出入時)は紛失は補償するが損傷は補償しない
これらの課題は、どうにも先進国には当てはまらないような気もするのですが、どうなんでしょう(下に書いてますが、最初はロシアでスタートするそうなので、ロシアでは起こりがちなんでしょうか・・)
提供ソリューション(一部)
輸送の依頼時点から、輸送の完了/支払い完了までのすべてのアクションをブロックチェーン上に記録する。 合意された条件で輸送が完了すれば自動的に輸送記録がブロックチェーン上に書き込まれ、支払いが実行される。
※この文章もホワイトペーパーから私の方で勝手にまとめて書いています
貨物の損傷に対しては、GPSで貨物の位置を追跡することで防ぐことができるような趣旨が書かれていますが、貨物の場所が特定できても損傷まではわからないのでは?と思ってしまいます。。
貨物の保有者の信用力に対しては、IMMLAが信用力を保証するライセンスを発行するようです。 一から信用情報を蓄積するのに何年かかるのでしょうか・・
為替変動リスクに対しては、すべての支払いはIMMLAトークンを使う、とのこと。たしかに運送会社間の取引はこれでよいかもしれませんが、結局決算時には法定通貨にするでしょう(上記課題の所にも書いてありましたが、ドル決算の会社が円で売上を上げた場合と根本的には同じ状況です)さらには、暗号通貨の方が価格変動が大きいため、とても企業がそのまま保有するとは思えません(時価算定するたびに資産、または売上が大きく変動するようなことは避けるはず)
ソリューションがいまいちピンとこないのは私だけでしょうか・・
今後のスケジュール
- 2018年 ロシアの陸運・海運マーケットに参入
- 2019-20年 CISに拡大
※ CISはロシア・ウクライナ・モルドバ・アゼルバイジャン・ベラルーシ・カザフスタン・アルメニア・ウズベキスタン・キルギス・タジキスタン - 2021年 ヨーロッパ、中国に拡大
- 2022年 アジアへ拡大
- 2023年以降 世界中でサービス提供
最後に
同じくホワイトペーパー読んだ方、もしくは運送会社(フォワーダーも)の方とも話してみたい感じです。
私の英語力にも影響されますが、そんなに魅力を感じませんでした。。
物流に斬りこむ、というのは非常に面白いと思うんですが。ちょっとICOの過熱感も引いてきている感じのある中で、これはどこまでやれるのか、気になるところです。