医療系ICOについて概要をまとめ、暗号通貨・仮想通貨界隈での医療系ICOの動向を分析しました。
今回はもう少し踏み込んで、過去に医療系の仕事をしていた経験を踏まえ、面白そうな案件・怪しげな案件を各2つずつ選定しました。
医療系案件は大成するまで時間がかかることが予想されます。裏を返せば、いつ投資してもリターンを得られる可能性があるとも言えます(期待感で大きく価値が変動する暗号通貨ですので、ICO価格割れのタイミングに投資できるかもしれません)ので、
ICOの終了などは考えずに選定しました。
面白そうな案件
医療系は長い目で案件を見守る必要がありますので、 社会的な意義がありそうな案件、他にない発想の案件を主観で選びました。
WaBi(ワビ)
偽造品を流通時に予防するための商品認証技術を開発しています。
すでにサービスを開始しており、偽造品防止に一役買っています。
公式ホームページ:https://www.wacoin.io
ホワイトペーパー:https://resources.wacoin.io/WaBI_Whitepaper_ENG.pdf
社会的意義の観点 ー 世界的には偽造品に苦しむ人が多く意義深い
主に使われている中国では、偽造品が大きな問題になっています。
そのため、購入しようという商品がどこで使われ、どのような流通経路で手元に来ているのかわかる本プロジェクトは非常に有意義です。
商品についているQRコードを読み込めばそれができるので簡単です。
Wabiは買い物に使うことができ、必ずしも医薬品に特化しているわけではありません。が、地理的に近い東南アジアでも偽薬は問題になっています。
汚い(失礼)薬局になぜか処方薬(医師の診断・処方が必要)が置いてあったりしますが、現地の製薬企業の人曰く、偽物らしいです。
体が弱っている時に偽物の薬を飲むのはかなり怖いですよね・・・
日本では偽造品なんてあまり耳にしないですが、世界で見れば偽造品回避はかなりの需要があるものと思われます。
開発状況の観点 ー すでにサービス展開中
2017年9月から、中国のベビー用品店3店舗でパイロット的にサービスを開始しています。
Walimaiはアプリもすでに提供しており、プロダクトがないままのICO案件よりも圧倒的に進んでいる印象です。
また、逆説的ですが、医薬品に特化していないので大きな市場を狙える点も魅力的です。
2018年は幼児製品・アルコールのメーカー、卸と提携し、さらなる拡大を目指すだけでなく、自社技術をアップデートし、医薬品にも対応するとしており、
今年の動向がかなり楽しみな案件と言えそうです。
価格動向 ー 安定した価格推移
Binance(バイナンス)のチャート(日足)を見ると、現在は下落トレンドのようです(仮想通貨全体の市況が芳しくないですが・・・)
そうは言っても現在の価格は0.00147 Wabi/ETH(ざっくり1ドルくらい)で、
ICO価格(1Wabi = 0.25ドル)でしたので、4倍くらいの価値になっています。
やはりプロダクトがあると価格も安定しています。
GivaCoin(ギバコイン)
ドナーへの報奨スキームの構築を目的とした案件です。
公式ホームページ:https://www.givacoin.io
ホワイトペーパー:https://www.givacoin.io/wp-content/uploads/2018/01/GivaCoin-Whitepaper-v1.0-ENG.pdf
社会的意義の観点 ー ドナーを申し出る勇気や意義に目に見える感謝を
ドナーとはなんなのか、経験された方のコメントは重みがあります。
私は過去に小松美彦氏の講演を聞いたこともあるのですが、
- 脳死患者は痛みを感じる
- 脳死という診断を受けた後でも一定割合で社会復帰している
といった話を聞きました。特にこの1ですが、痛みを感じて自分の臓器を提供するなんて、と衝撃を受けた記憶があります。
蛇足ですが、脳死患者さんに筋弛緩剤や痛み止めを投与している、とか、暴れる脳死患者さんを抑えつける映像を見てかなりショックを受けました
ちなみにこの先生は本も複数書いており、興味のある方は見てみてください。技術が進むからこそ倫理的な感覚も必要かなと思ったりします。
いうまでもないですが、移植で助かる方もたくさんいるわけで、ドナーをやるなとかそういうことは考えていません。
とまぁ、ドナーをやるというのはどのような状況であれ、かなり大きな決断だと言えます。
そのドナーの方に感謝の気持ちを伝えるプロジェクトだと思うと意義深いように思われます。
逆にマイナスの見方をすると、新興国では子供を誘拐してドナーとして使うような卑劣な犯罪があるようですが、こうした人間が報酬目当てにさらに同じことを繰り返すきっかけになる可能性も0ではありません。。
なお、もともとこのプロジェクトは、個人(患者さんやそのご家族)が移植手術をうけるために行う寄付募集をより効果的に行うことを目的としていたようです。
開発状況の観点 ー プロダクトがまだない状況・・・
ロードマップによると、2018年に開発を本格化するようです。
したがって今はプロダクトがない状況のようです。
せっかく面白そうなテーマなのにもったいない・・嫌な予感が・・・
ICOの観点 ー 資金使途に不安が
仮想通貨関連のプロジェクトは、結局のところシステム開発にお金がかかるものだと思うのですが、この案件では10%しか割り振らないようです。
もちろん認知度向上が重要だとは思うのですが、まだプロダクトがない状況でこれはさすがにものが出来上がるのか怪しくなってしまいますね。

よくなさそうに見える(怪しげな)案件
批判するつもりもなければ絶対無理だとも思っていませんが、現時点では不透明な部分が多いのではないかという案件をあげています。
なお、医療系ICOを類型化した記事にも記載した通り、情報管理・共有系は多数のICO案件があるため、資金が分散したり、期待感の取り合いになりそうなので、暗号通貨・仮想通貨の価格が上がっていくのかどうか疑問が残ります。
Dermavir(ダーマヴィル?)
HIV用ワクチンの開発(現在フェーズII)を目的としているプロジェクトです。
公式ホームページ:http://www.geneticimmunity.com
ホワイトペーパー:http://dermavir.com/wp-content/uploads/2018/02/dermavir_coin_white_paper.pdf
社会的意義の観点 ー 治療ができれば相当のインパクト
いまだに治せないHIVの治療用ワクチンを開発しており、完成すれば当然社会的意義は相当なものです。
開発状況の観点 ー 臨床試験が事実なら可能性あるも不安な点あり
現在フェーズIIとのことです。
創薬のプロセスは、効果のありそうな物質を見つけてから発売するまでに長い道のり(だいたい10年くらい)があります(フェーズIIは下図赤枠)。
フェーズIIは、少数の患者さんに投与し、 効果と副作用を見極めるとともに、最適な投与方法を検討するフェーズです。
新薬の開発はとても大変で、新規物質を発見してから実際に薬として届けられる確率は1万分の1とか2万分の1とか言われています。
蛇足ですが、このため最近は製薬会社はM&Aを活発に行い、有望な医薬品を取り込むようになっています(作るよりコストが低い)。
フェーズIIからだとどのくらいの確率で新薬ができるかというと、JPMA(製薬協)の調査によると、
38%(フェーズII→III)x 80%(フェーズIII→承認) = 30.4%
意外と高いですね・・・
ということで本ICOが(研究開発をしっかりと行っているという前提で)うまくいく可能性は30%くらいということでしょうか(前提としている数字は日本のものなので正しくはないのでしょうが・・・)
なお、Dermavirでグーグル検索すると複数の論文が引っかかります。
これらはホワイトペーパーでも参照したということが記載されているのですが、論文のメインオーサー(主に研究を進めていた研究者)としてLori F(おそらくFranco?)博士やJulianna Lisziewicz博士などが有力な研究者のようですが、このICOには無関係のようです。
逆にこのICOのCEOであるViktor Rozsnyayという人は、論文に一つも参加しておらず、
Advisorにいる人たちもMr.という敬称なのが不思議です(研究者であれば博士号を取っているでしょうから、Dr.になるはずでは?)。
ということで、フェーズIIが事実であれば、医薬品の上市(病院で使われるようになること)は現実味を帯びているわけですが、
そもそもどこまでが本当なのか検証しがたいところがあります。
通常の(そして有望な)バイオベンチャー(新薬を作るベンチャー)であれば、ベンチャーキャピタルや製薬会社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)といった法人などがお金を入れているはずで、個人の付け入る隙などないはずです。
いまは金余りの時代なので、なおのこと、その状況は顕著ではないかと推察されます。
その点も踏まえ、この案件はちょっと香ばしい匂いがします。
ICOの観点 ー 発行枚数は少なめ
2018/3/20まで1st プレセール中で、30%ディスカウント(1DVT=0.7ドル)で購入できます(DVTはDermavirのコイン)。
このあと2nd / 3rdプレセール、ICOを経て、2018/5/30まで続くようです。
- 1st プレセール:1DVT=0.7ドル/1,000,000コイン発行
- 2nd プレセール:1DVT=0.8ドル/2,000,000コイン発行
- 3rd プレセール:1DVT=0.9ドル/3,000,000コイン発行
- ICO:1DVT=1ドル/4,000,000コイン発行
合計で1,000万枚で1ドルなので、ICO直後の時価総額は10億円程度ということなので、
上方向も(数字だけ見ると)ありそうですが・・・
Red Lanterns(レッド・ランターンズ)
性に関する疑問に専門家が回答するコミュニティやユーザー同士の(性的な)交流を支援するプラットフォームの開発を目的としているプロジェクトです。
公式ホームページ:https://ico.red-lanterns.com
ホワイトペーパー:https://ico.red-lanterns.com/storage/documents/RL_WP_8.2_en.pdf
社会的意義の観点 ー 着眼点はよいかも
性に関することはなかなか相談しづらいですし、授業で習うわけでもないので、性教育に一石を投じる案件になるのかもしれません。
その道(どの道?)のエキスパートに色々相談することができるということで、聞きにくいことも聞けてしまうのかもしれません。
開発状況の観点 ー 進んでいるようで進んでなさそう
今回のICOの前に、すでにモバイルアプリを開発しているとのことで、なにも物がないのに集金している、というものではなさそうです。
公式ホームページを見るとiPhoneアプリもありそうなのですが、アップルストアでRed Lanternsなどで検索しても出てきませんでした。
また、公式ホームページでアプリのリンクをクリックすると、なぜかアップルストア(ロシア)の公式ホームページらしきところに飛び、アプリのページには行けませんでした・・・

開発状況に不安が残りますね。。。
ICOの観点 ー 使途に違和感
開発チームが留保する分は全体の10%のようで、おかしな水準ではないと思いますが、集めたお金の使途のうち80%がマーケティングに使う(開発は12%のみ)、というのが釈然としません。。
また、ICOは2/14〜2/28の2週間と当初予定していたはずですが、知らぬ間に?4/15までになっていました。
なお、ICO開始から2週間強が経過し、ソフトキャップの15%しか資金は集まっていないようです。。。
最後に
前回表をまとめたときには、これは面白そう!これはダメそう!というのがあったので、もっとテキパキご紹介したかったのですが、いろいろ調べると記事が重くなってしまいました・・・
他にもZenomeやFarmaTrustなども面白そうだと思ったので、機を見てご紹介できればと思います。
ICOに参加するために(円からビットコインやイーサリアムを調達)
円を仮想通貨に変えるためには日系取引所を使う必要があります。
なお、取引所の比較については下記をご参照ください。