8月10日、トルコリラが急落しました。
エルドアン大統領が強権を発揮し始めてから雲行きが怪しくなりましたが、
トルコリラ円は一時15円を割りました。
私がFXをはじめた2008年時点では90円ほどだったことを思えば、想像し得ないほどの下落と感じています。
リーマンショックは2008年に大暴落が発生しましたが、あれから10年、またしてもトルコを震源とした経済危機が起こるのでしょうか・・・
また、このサイトではスワップポイントについて紹介してきましたが、この下落はではためてたスワップポイントも吹き飛ばす勢いでした。
しかし今回の下落をもってセリングクライマックス、と見るには時期尚早のように感じています。
ちなみに私は下記のツイート以降ドテンロングし、スワップ生活を休業しています・・・
https://mobile.twitter.com/cc_workinv/status/999054324289323009
目次
トルコの現状
エルドアン大統領の再選・独裁色強まる
ご存知の通り、2018年6月24日にエルドアン大統領が再選されました。
元々強権的な姿勢だったエルドアン大統領ですが、今回の再選で独裁とも言えるような強権を大統領が手にしたことになります。
大統領の強権化は下記のようなものがあります。
- 首相職・副首相職を廃止し、(元々は儀礼的な存在だった)大統領が行政の長となる
- 大統領が司法制度に自由に介入でき、判事・検察官人事を主導できる。また、非常事態令も公布できる(2016年に起こったクーデターを機に、エルドアン大統領の反対派を一斉に処分)
- 大統領が国会の解散権を持つ
- 大統領が中央銀行総裁の人事権を持つ
(出所:2018年7月10日付日経新聞、2018年7月11日付日経新聞)
もはや民主主義的な三権分立など期待できない状況です。
縁故的な閣僚人事
2018年7月9日、エルドアン大統領は閣僚人事を発表しましたが、肝心の財務相に娘婿のベラト・アルバイラク氏(前エネルギー天然資源相)を指名しました。
一方市場からの信頼が厚かったシムシェキ(前)副首相は閣僚人事から外れました。
経常赤字・慢性的なインフレなど、問題が山積されている中、手腕が未知数の親族を指名したことで市場の不安は一層高まりました。
8月10日にトルコリラが暴落した際には、アルバイラク氏から新経済政策の枠組みが発表されましたが、
これといった新しさは見当たらず、市場からの信頼を勝ち取ったとは言い難い状況です。
直近ではアルバイラク氏と投資家の電話会議の結果に期待が寄せられ、2018年8月16日までトルコリラは3日の連続で反発していますが、
19円半ばで失速しました。
アルバイラク氏の経歴
アルバイラク氏はイスタンブル大学英語学部を終了後、ニューヨークのペース大学にてMBA(経営学修士)を修了しています。
その後チャルクホールディングス(トルコの大財閥)のアメリカ法人にてCFO(Chief Finance Officer:財務責任者)や本体のCEOを経験している(出所:http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20151125_072030.html)ので、
全く経済に疎い、ということはなさそうです。
とはいえ、自身を閣僚に引き上げてくれた義父であるエルドアン大統領の意向を無視した政策を行えるかというと難しいのではないでしょうか。
中央銀行の独立性の毀損
通貨安のときには政策金利の引き上げが効果的、というのはリーマンショックの後の対応を見ても当たっていると思いますが、
エルドアン大統領は利上げに一貫して反対しています。
景気への影響を配慮して、ということがよく言われていますが、根本的にはイスラム教の教義によるところも大きいようです。
イスラム教では、お金を貸し出す際に金利をとることは禁止されています。
エルドアン大統領は敬虔なイスラム教徒ですので、景気より教義に則っているのではないかと思われます。
政教分離のトルコでしたが、そもそものところで根本的にトルコの政策運営が変わっていく可能性を秘めているように感じます。
また、過去にも中銀の決定に影響力を与えていたエルドアン大統領ですが、
中銀総裁の人事も行える立場となり、なお一層エルドアン大統領の意図が中銀の政策に反映されていくことが懸念されます(=利上げがより難しくなる)。
アメリカとの対立激化
対立激化、というだけでなく、トルコの方から積極的にアメリカから離れていっているように見えます。
ブランソン牧師の軟禁
アメリカ人牧師のアンドルー・ブランソン氏が、2016年のトルコにおけるクーデターを支援したとして2年ほど自宅軟禁となっています。
アメリカ側はクーデターを支援したという確たる証拠がないとして、ブランソン氏の解放をトルコに要求していますが、
トルコ側がこれを拒否し、アメリカ・トルコの関係が悪化しています。
(出所:CNN)
アメリカはトルコに対し経済制裁を課し、さらなる追加制裁の可能性にも言及しています(出所:Reuters)
一方、トルコも負けじと
アメリカ製品に関税をかけたり(出所:TRT)、
不買運動をよびかけたりする(出所:Reuters)
など、関係改善に向けた動きは見られません。
現在はブランソン牧師の動向が注目を集めていますが、牧師の釈放だけでトルコリラの価値が戻ってくるかというと、材料が多すぎて怪しそうです。
イランとの接近
8月12日に、イランはトルコへの支援を表明しました(出所:TRT)。
一方、アメリカは、核合意から離脱したイランに対して制裁再開を開始しています(出所:ニューズウィーク日本版)
この「敵の敵は味方」とも取れるような接近についても、おそらくトランプ大統領は見過ごせないのではないでしょうか。
ロシアとの接近(ロシア製ミサイル防御システムの導入)
トルコはNATO加盟国(西側)であり、アメリカからステルス戦闘機F35を購入していました。
しかし直近でロシアの最新ミサイル防御システムS-400の導入を決めたことで、アメリカ側はトルコへのF35売却を凍結しました(出所:FNN)
平たくいうと、このアメリカのステルス戦闘機がロシアのレーダーに映るのか否か、実験できてしまい、F35の対策を仮想敵国に知られてしまうことを問題視しているようです。
チャートの状況
EURTRY(ユーロトルコリラ)のチャート
8月10日の急騰から4日間はユーロ売りとなっていますが、
上述の状況からすると、トルコリラのショートカバーという意味合いが強そうです。
また、引き続き高金利ですので、値頃感から買いを入れている人も多いのではないかと推察されます。
チャート的にはボリンジャーが広いままで、直近は下ひげが目立っていることを見ると、
まだトルコリラを買うのは怖いように思います。
TRYJPY(トルコリラ円)のチャート
こちらは景色が反対になっていますが、
暴落後、4日続伸していますが、19円半ばにして失速しています。
いったんはショートカバーが一巡した格好でしょうか。
世間が注目しているブランソン牧師の釈放もまだ見えていない状況なので、これ以上の上値追いは難しく、むしろショートをたてやすいところに来ているようにさえ見えます。
最後に
現在は夏枯れということもあり流動性が低下しているだけでなく、トルコリラの信認に関わる状況もあり、流動性のさらなる低下、証拠金比率の増加(レバレッジ規制)と取引しにくい状況にあります。
スプレッドが大幅に広がり、いきなりロスカットされることもあるかもしれません。
もう少し相場が落ち着いてから取り組む、もしくは少額での取引が安全です。
EURTRYの取り扱いのある取引所
EURTRYの取り扱いのある取引所はそう多くはありませんので、すでに口座をもっているところや、キャンペーンのあるところで口座を開いてしまうのが良いかと思います。
→ 過去の相場変動時も良い対応していただきました(過去記事)
→ アブレッシブ指値にはまりました(過去記事)